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求め続けるもの(5) [長編]

「ユーリを此処から出す事は許さぬ!!」

カイルは部屋の見張りの兵に強く命じた。


「皇帝陛下」

「イル・バーニ、そなたの言いたい事など

聞かぬともわかっている」

「ならばよろしゅうございます」

軽く会釈をしてカイルの後ろについて歩く。

向う先は元老院の待つ議会場。

「よほど寵妃と過ごされるのが楽しいようでございますな。

会議の時間はとうに過ぎておりますが」

元老院の一人が皮肉いっぱいに言い放った。

「まこと皇帝ともあろうお方のなさる事とは

思えませぬ。器が知れましょう」

ここぞとばかりにナキア皇太后が口を挟んだ。

「歴史の中には女が少なからず影響するもの。

そうは思われませんか?皇太后」

カイルの含みのある言い方にムッとして

ナキア皇太后は椅子に座りなおした。

『私の事を言っているのか、カイル』



「今日の議題を述べよ」

ざわついた議会が一瞬にして沈黙する。

若き皇帝の凄みに反応した。


「諸国は今表面上平静を保っているようでございますが

いつ何時また戦が始まるやもしれません。

陛下がお止まりでない時はヒッタイト王国を

内から守るべきものが必要かと思います。

ついては一日も早く正妃をお迎え下さり

世継ぎを成して安定して

頂けるようわれらは要求いたします」


「今はその時期ではない」


「しかしながらいつまでも正妃が空位のままという

訳にはいきません。陛下はどうお思いか?」


「今更語る必要もないであろうがヒッタイトの正妃は

各国のそれとは異なる重要な地位。だからこそわたしは

慎重を期したいのだ」

「確かに陛下のご意見はごもっともなれど

次期皇太子殿下をきっちりとした立てねばこの国の混乱

いえ内乱の原因ともなりかねません」

『わたしに何かあれば次の皇帝はジュダだが

皇太后はそんなことのためにわざわざ議会を

開いたとも思えぬ。正妃を迎えわたしに子ができればジュダは

継げぬ。何が目的だ?』

「用向きがそれだけならばもうよい」


「くどいようでございますがどうか今日の事はお心に

お止め下さるようお願いいたします」


「閉会!」


カイルの言葉で元老院は散会した。


「皇帝陛下、貴方といえど無理を通してイシュタル様を

正妃に据えること等できますまい。元々わたくしがこの世界に

引きいれたもの。いい加減お返し頂きたい」

「まだ呪詛を諦められていらっしゃらぬのか?」

皇太后は首を振った。

形代としての役割などどうでもいいこと。

これ以上カイルの名声を高めるわけにはいかない。

「わたしにもこのヒッタイトのおいてもユーリは

不可欠なものとなった。貴女が否定しようとも

民衆は同じように思わぬはず」

皇太后は唇をかむと何も言わず立ち去った。

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