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求め続けるもの(9) [長編]

「陛下はユーリ様に会われたのは何時間前ですか?」

「何故そんな事を聞く?」

「いえ、別に」

歯切れの悪いイル・バーニの言い方にカイルは疑問に

感じながらも答えた。

「わたしがユーリに会ったのは今朝だ。それ以降は顔を

合わせていない」

「居なくなられたのは一時間前でなく半日前という可能性も

ありますな」

「それがどういう意味かわかっているのか?」

イル・バーニは小さく頷いた。

ハディたちはあれから一時間以上三人揃って

ユーリから目を離す事等なかった。

何か用むきがあるなら誰か一人はユーリの傍にいるはずだ。

三人ともユーリを見失うなど考えがたい。

「このままという訳にはいきますまい」

確かにこのままだとユーリの失踪は明るみに出てしまう。

「わたしなりに探らせて頂きますが異存はありませんか?」

カイルは頷いた。




「最近、イシュタル様をお見かけしませんが

あのような下賎な娘が繊細な神経を持ち合わせてるとも

思いませんが。もしや逃げられては困るので

監禁でもされているのか?」

皇太后は低く笑った。

その言葉にカイルは内心ドキリしながらも平静を装った。

「ばかげた話です」

「皇帝ともあろうものが女一人意のままにならぬ等と言う

こっけいな事ありますまい」

「・・・・・・」

「こちらとしては宮が汚れなくて有り難いが」

「下賎という言葉は取り消して頂きたい!

ユーリを貶める事で貴女自身が民衆の反感を買う事にも

なりかねません」

「異国から来た娘も偉くなられたものだ」

「ユーリは自分で此処まで頑張ってきた。

それを皆が認めただけです。生まれや国は関係ない」

「法を曲げても正妃にされる気か?

今まで積み上げてきた名声も努力も小娘一人のために

捨てるおつもりか?」

「それは今決める事ではありません。わたしはこれで」

皇太后の表情が少し歪んだ事をカイルは見過ごさなかった。

やはり皇太后は今回の事には加担していない。

もし関わっているのならわざわざユーリの事を持ち出すほど

愚かではない。


外国の諸国が関与してる可能性が低い。

となればやはり内部の者が関わっていると言う事か。



その夜半にイル・バーニがカイルの部屋を訪ねた。

「それは事実なのか?」

信じられない内容に念を押すように訊いた。

「間違いございません」

「信じられぬ・・・」

カイルは言葉を失った。

「ついては明日詰問したいと思いますが」

「ユーリの身の危険はほぼ無くなったが・・・」


雲に隠れようとする月を見ながらカイルは溜息をついた。















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