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求め続けるもの(18) [長編]

―ハットゥサ―

「陛下、ルファサ達が捜索にあたっております故

落ち着かれませ」

イル・バーニの言葉にも答えず、

カイルは椅子に座ったまま両手で頭を抱え

下を向いたままだった。

ユーリの安否を確認する事もなくカイルは諌められて

ハットゥサに帰ってくるしかなかった。


「一度は掴んでいたというのに・・・」

カイルは拳を握り締めて自分の不甲斐なさに怒り震えていた。


「陛下・・・」


「ハディを此処に」


「しかしながら・・・」

午後から謁見や会議の予定が入れられている。

それはカイルもわかっていたが思うように身体が動かない。

今はほかの事を考える余裕は無い。

「とてもこのような状態では正しい判断などできぬ。

どうしてもハディに尋ねたい事がある」


根負けするような形でイル・バーニは今日の予定を

キャンセルして時間を空けた。




「お呼びでございましょうか?」

ハディもユーリの事が気がかりで顔色が悪かった。


「ユーリはわたしの子が出来た事をどう思っていたのか?」


「ユーリ様は戸惑っていらっしゃいました」


やはりとカイルは落胆した。

あのような形で無理に契りを交わしたのだから

無理はない。

しかしそのような確固たる結びつきが出来た事をカイルは

心のどこかで嬉しさを感じていた。

子供の事を知った時、驚きも大きかったが

嬉しさがこみ上げてきたのも事実。

形はどうであれ本気で全身全霊をかけて愛した証。



「御子をお一人で育てる覚悟をされていたのです」

それ程にユーリに嫌われていたとは・・・。

カイルは指先を頭に食い込ませた。

「陛下の為にそうするべきだとお考えでした」

「どういう意味だ?」

「ご正妃をお迎えになる時、自分と御子がいれば

あだなすと思われたからです」

「バカな・・・、わたしはユーリ以外正妃を迎える気などない」

「陛下には強力な後ろ盾をもった姫を正妃に迎えて頂きたかったと

おっしゃっていました」




―回想―

「ユーリ様、如何なさいました!?」

床に伏せながら何度か嘔吐を繰り返すユーリを

見つけたハディは手にしていたものを放りなげて駆け寄った。

「・・・・・」

「すぐに医師を・・」

「・・・待って・・・」

ハディの腕を掴んで引き止めた。

「ユーリ様・・・?ここ数日また加減がお悪いのでしょう?

診て頂いたほうがよろしいのでは?」

ユーリは横に首を振った。

「陛下もご心配なさいます」

「病気じゃない・・・」

「もしや御子が・・」

ハディはようやく気づいた。

「・・・・・・・・・」

「陛下にご報告を。きっと喜んで下さいますわ」

「言わない!陛下はちゃんとしたご正妃もって頂かなきゃ。

あたしは足かせになりたくない」

「陛下はそんな風にユーリ様の事を思ってるはずは

ございません!」

「そうかもしれないけどあたしじゃダメ・・なの」

「ユーリ様」

ハディにもユーリの切ない気持ちが伝わってきた。

「だから密かに此処を出なきゃいけない」

「どちらに行かれるおつもりですか?そのようなお体で」

「でもこのままじゃ皇太后にも知られる可能性も

あるから。此処へは居られない」




















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